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中谷大臣、中東3カ国歴訪 日本の防衛相としてトルコ初訪問(2025年8月17日~22日)
2025年8月26日更新
日本の防衛大臣として初めてトルコを訪れた中谷大臣(中央左)とトルコのギュレル国防相(8月19日、首都アンカラの国防省前)=トルコ国防省提供
海賊対処行動に従事する現地派遣隊員らを激励する中谷大臣(8月18日、首都ジブチ市近郊)=防衛省提供
「中東地域の情勢は予断を許さない、予見しないことが起こりうる」――。8月17日から22日まで、ジブチ、トルコ、ヨルダンの中東3カ国を訪れた中谷防衛相は、日本の防衛大臣として初めて訪れたトルコで臨時記者会見に臨み、中東情勢についての認識を示した。「地政学上の要衝」であり、我が国の「シーレーン」を有する中東地域の訪問は「極めて重要」との言葉どおり、今回の中東3カ国訪問は中谷大臣にとって実りあるものになった。
トルコと装備の協議体設置へ
「防衛産業のさらなる発展を確実にするため、最善を尽くす準備ができています。中谷大臣と共に、この発展を確実にするためにあらゆる努力を払います」――。
トルコのヤシャル・ギュレル国防相は日本の防衛大臣との初めての会談で、こう話した。
トルコの防衛産業は近年、飛躍的な成長を遂げている。
『フォーリン・アフェアーズ・リポート』誌の中で、マサチューセッツ工科大学のエリック・リン・グリーンバーグ氏は、「今や、イランやトルコなどの新たな軍事サプライヤーがドローンの輸出を通じて対外的影響力を強化している。トルコは外国の兵器サプライヤーへの依存を減らす意図もあってドローン開発を試み、『バイラクタルTB2』は大きな注目を集めるようになった」と指摘する。
今回、中谷大臣が訪問した中東3カ国の中で、最も長く滞在したのがトルコだ。8月19日にトルコに到着後、翌20日までの2日間、防衛相会談やトルコ国防産業庁長官との懇談のほか、トルコ航空宇宙産業(TUSAS)社、イスタンブールの海軍工廠、バイカル社を視察。
中谷大臣は会見で、国防産業庁長官との懇談では「日本側のトルコ無人機産業への関心が共有された」とした上で、「これに係る協力の可能性を検討するため、相互の輸出管理制度や産業能力の詳細について、防衛装備庁とトルコ国防産業庁間や産業間で実務レベルの協議を立ち上げることにした」と明かした。
また、トルコの主要防衛産業を視察した感想として、「国産化に伴う防衛産業の育成に力を入れていると感じた。トルコが国産化を推し進める姿は『やればできるんだ』ということを実証している」との見解を表明。
その上で、「トルコ製の防衛装備品の取得を予断するものではない」としつつ、「今後の我が国の防衛に必要な装備品を総合的に検討する上で、大変有意義な情報が得られた」と成果を語った。
中谷大臣はトルコ訪問に先立つ17日、ジブチを2019年12月の河野太郎防衛相以来、約5年7カ月ぶりに訪れ、自身としては4回目の訪問となった。
自衛隊唯一の海外拠点のある同国で、海賊対処行動などにあたっている派遣隊員を激励すると共に、ハッサン国防相代行との会談では、今年からジブチ軍楽隊の育成事業を開始することで合意した。
最終訪問先のヨルダンではジャアファル・ハッサン首相兼国防大臣と会談し、在留邦人退避の協力に感謝し、引き続き防衛協力・交流を促進することで一致。さらなる防衛協力の方向性について議論するため、外務・防衛当局間の協議を実施することで合意した。