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統合作戦司令部の誕生に寄せて 3人の統幕長経験者が語る<2>(2025年5月13日)
2025年5月13日更新
第5代統合幕僚長・元海将 河野克俊氏
効果的な統合運用に向け新時代
■自衛隊の統合化への歩み
統合作戦司令部が発足したことは、かつて統合化に携わった者として感慨無量である。しかし、ここまでたどり着くには長い道のりが横たわっていた。そこで、まずここに至るまでの自衛隊の歩みを今一度振り返ってみたい。
1954年に防衛庁・自衛隊が発足し、昨年で70年を迎えたが、発足当初から自衛隊は憲法9条のくびきを引きずってきた。
その結果、与党自民党も自衛隊を動かそうとすると国会、国民世論の猛反発を覚悟しなければならなかったため、自衛隊は存在すれども動かない時代が約40年近く続くこととなった。
その状況が一変したのが1990年の湾岸危機である。冷戦終結直後、イラクのサダム・フセイン大統領が隣国クウェートに武力侵攻した事案である。当時のブッシュ米大統領(父)は多国籍軍を編成し、原状回復を図ろうとした。そして当時、経済大国第2位の日本にも参加を求めたのである。
自衛隊を動かすという発想がなかった当時の日本政府は大混乱をきたし、議論すれども結論は出ず、結局130億ドル(約1兆7000億円)を拠出したが、国際社会から評価されなかった。さすがに国際的孤立を恐れた日本政府は、戦後処理の名目で掃海部隊をペルシャ湾に派遣した。これを契機に自衛隊は、「オペレーションの時代」に入ったと考えている。
オペレーションの時代になると、当然それに対応できる組織編成への要請が起きてくる。実任務が多様化すれば、当然、陸海空が協力しながら任務を遂行しなければならない。
その結果、・・・