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時の焦点<国内>

衆院選公示

難局打開へ具体策を競え

 国際情勢が激動する中、日本の針路を問われる衆院選が公示された。初の女性宰相を擁する自民党と日本維新の会の連立が、政権基盤を安定させられるのか。あるいは「中道」を掲げる新党が政局の主導権を握ることになるのか。力をつけつつある新興政党も無視できない。

 民意が多様化し、多党化時代を迎えている。しかも与野党共に基本的に選挙協力を行っていない。このため衆院選の帰趨(きすう)は見通しにくい。有権者の選択はこれまで以上に重みを増していよう。

 高市早苗首相は今回の衆院選について、自らが首相を続投して良いのか、それとも中道改革連合の野田共同代表らに代わるべきかを国民に問う機会と位置付けた。

 高市内閣は高い支持率を維持しているが、自民の政党支持率はそれほど伸びていない。今回、首相が「首相選択選挙」の構図を強調しているのは、自らへの支持を自民の得票に結びつける狙いがあるのだろう。

 中道改革は、高市政権の発足で日本が右傾化しつつある、と主張し、「右派か中道か」の選択という構図に持ち込もうとしている。党の綱領では、「生命・生活・生存を最大に尊重する人間主義」という理念を掲げた。

 幅広い層から支持を得たいのだろうが、理念の話題が先行しても、有権者は判断しようがない。与野党は、難局を乗り切る処方箋を提示し、経済財政運営や安全保障政策、外国人対策などを具体的に競い合うべきだ。

 一方、選挙の焦点となっているのは消費税の減税・廃止だ。多くの政党が目先の人気取りに走っているのは嘆かわしい。

 消費税は、年金、医療、介護などの社会保障サービスを維持する基幹財源だ。食料品の税率をゼロにした場合、年5兆円の税収減となる。代替財源を確保できなければ、社会保障サービスを削らざるを得まい。財政の悪化も免れない。各党は、経済の成長につながる具体策を論じる必要がある。

 国際秩序は崩壊寸前にある。日本周辺の安保環境も悪化する一方だ。多国間で協調する体制を再構築するため、日本は積極的な外交を展開することが求められている。

 だが、衆院選公示前日に開かれた、各党の党首討論会での外交・安保政策に関する議論は物足りなかった。野田氏は、日中関係を悪化させた責任は高市首相にあると批判したが、中道改革の前身の立憲民主党にも責任の一端がある。

 昨年の臨時国会で、立民議員は台湾有事を巡る対応を執拗(しつよう)に質問し、首相の存立危機事態に「なり得る」という答弁を引き出した。

 外交を政争に絡めるのは不見識ではないのか。各党には、世界全体を見据えた外交戦略を論じ合ってもらいたい。

夏川明雄(政治評論家)

(2026年1月29日付『朝雲』より)

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