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時の焦点<海外>

中国の対米攻勢

鋼鉄と「無制限の戦争」

 80年前の1945年、米国は世界の銑鉄の67%、鋼鉄の72%を生産していた。だが、2014年には銑鉄がわずか2.4%、鋼鉄も5.3%に落ち込み、21年には中国企業・中国宝武が世界最大の製鉄会社になった。中国は巨大な量の鋼鉄をどうしているのか。

 25年11月5日、中国軍の最新空母「福建」が海南省三亜の軍港で就役。中国の空母としては3隻目で、習近平国家主席が自ら、現地での式典に出席した。

 事実、習主席は12年の就任以来、人民解放軍の整備・総点検を監督し、27年までに米軍に匹敵する「完全に近代化」した軍を構築すると表明。

 中国は大型水陸両用機の建造にも力を入れ、その数は米国に次ぎ世界第2位。米戦争省が21年11月に発表したところでは、中国は艦船355隻で世界最大の海運力を保有する。同省は、これが27年には420隻、30年には460隻に増加すると予測。

 トランプ大統領が25年4月10日、中国に大きく後れを取る造船業の再生を期して行政命令に署名した(FOXニューズ・同月21日)のも、当然と言えば当然だ。

 中国の大型艦隊の意図は南シナ海をパトロールするだけなのか。台湾を奪取する際の軍事力の一部とする狙いなのか。習主席は10月20日から23日まで開かれた「中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)」の開幕演説で「平和的再統一を真摯に求める」としつつも、「武力行使の放棄は決して約束しない」とも述べた。

 中国が米国と戦う事態は起こり得るのだろうか。アングルを変えた答えの一つが既にある。

 20年に米国で翻訳出版された『Unrestricted Warfare(無制限の戦争):China's Master Planto Destroy America』で、中国がどうやって米国のような科学技術で上回る国を打ち負かせるかを説いた。原書は2人の中国空軍大佐が1999年に著した。同書は、革命を単に軍事的思考やテクノロジーの面からのみとらえているのが「米国の最大の弱点」と衝く。

 米国は法律・経済・政治の要因を軍事戦略の幅広い構図とは考えていない。だから、この面からの攻撃に弱く、直接、軍事的に衝突しなくても、米国を弱体化させることができることになる。中国が軍事力以外の手法で米国を攻撃している証拠は十分ある。

 ▽「中国、今回の選挙に干渉した可能性」(米ニュースサイト「アクシオス」22年11月8日)インターネットの偽サイトなどで、有権者を中国寄りの候補者に投票するよう誘導。

 ▽中国は米国の農地20万エーカーを購入。しかも、多くが、ノースダコタ州のグランドフォークス空軍基地やテキサス州のラフリン空軍基地と、重要軍事施設の近くに位置する。既に数州は外国人の農地所有に制限を課した(ラルフ・ノーマン共和党下院議員・サウスカロライナ州)。

 ▽「フェンタニルが18―45歳の成人の死因のトップ」(米ABCニューズ・22年3月18日)20年1月―21年12月の2年間に8万人が死亡、22年は10万人超の見込み。中国がこの合成麻薬の米流入の主要源。“暴戻国家”と呼んでも過言とは思えない。

草野 徹(外交評論家)

(2025年12月25日付『朝雲』より)

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