創刊70年を越える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

時の焦点<国内>

レーダー照射

看過できぬ中国の挑発

 自衛隊機を危険にさらした中国軍の行動は、不測の事態を招きかねない挑発行為であり、断じて容認できない。中国海軍の空母「遼寧」から発艦した戦闘機が今月6日、沖縄本島南東沖の西太平洋上空で、航空自衛隊の戦闘機に対して2回レーダー照射を行った。

 戦闘機のレーダーは、射撃の準備段階として目標を捉える火器管制や、探索のために用いられる。戦闘機がレーダーを照射した瞬間、全方位に発射され、相手国の戦闘機などにレーダーが当たることも珍しくない。だが、今回の照射は2回とも断続的に行われた。特に2回目は30分以上に及んだという。

 中国軍が自衛隊機を狙っていたことは明白だ。政府がレーダー照射を公表し、中国に抗議して再発防止を申し入れたのは当然だ。

 中国軍は、「自衛隊機が中国の訓練海域に接近し、飛行の安全に深刻な危害を加えた」と発表。公海上の出来事とはいえ、自衛隊が領空侵犯を警戒して行動するのは何ら問題がない。近年、中国は西太平洋に空母を何度も派遣し、艦載機の訓練などを行っている。今年6月以降は、海上自衛隊機などへの異常な接近を繰り返してきた。

 中国軍の戦闘機からのレーダー照射が確認されたのは、今回が初めてだ。一歩間違えれば軍事衝突にも発展しかねない行為であることを、中国は理解しているのだろうか。

 中国の習近平政権は、高市早苗首相の台湾有事を巡る国会答弁の撤回を求め、強硬姿勢を示している。自国民に日本への渡航自粛を呼び掛け、水産物の輸入を停止した。

 台湾有事で来援した米軍が攻撃された場合、日本が存立危機事態に認定し、集団的自衛権を限定的に行使して武力を行使することは、十分にあり得る。米軍への攻撃に日本が手をこまねいていたら、同盟が揺らぎかねない。首相の存立危機事態に関する答弁に落ち度はない。

 米国のトランプ政権は、中国との貿易問題を巡ってディール(取引)をしようとしている。このため今は、首相への支持を明確には打ち出していない。そうした状況を、日本への圧力を強める好機と中国は捉えているのだろう。

 東アジアの平和と安定を維持するには、日中関係を安定させることが不可欠だ。中国が一方的な主張を強め、危険な対応を取って地域の緊張を高めているのは問題だ。小泉進次郎防衛相は豪州との防衛相会談で、レーダー照射について説明した。豪州側は「大変憂慮すべき事態だ。日本と力を合わせて行動していく」などと応じたという。

 中国の脅威を受けている国々と協力し、海上の安全の確保に努めていくことが重要だ。

夏川明雄(政治評論家)

(2025年12月25日付『朝雲』より)

最新ニュースLATEST NEWS