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時の焦点<国内>

防衛装備移転

継戦能力向上見据えて

 自民党の安全保障調査会が、防衛装備移転3原則の運用指針の見直しに着手した。

 現在の運用指針は、防衛装備品の完成品の輸出について、相手国の用途が「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の「5類型」の場合のみ、可能と定めている。

 自民党は、5類型が防衛装備品の輸出を難しくしているとして、撤廃する方向で議論を進める。

 政府は2023年、外国企業に特許料を払って日本企業が製造している「ライセンス生産品」について、ライセンス元の国への輸出を全面的に解禁した。この緩和に基づき、防衛省は地対空誘導弾ペトリオットミサイルを米国に輸出した。

 装備品を他国と共同開発するケースでも、5類型は適用されない。ミサイル防衛システムを搭載した護衛艦など、殺傷能力を持つ装備品の輸出も認められる。

 今年8月には、オーストラリア政府が、海上自衛隊「もがみ型」改良型護衛艦をベースにした共同開発を採用した。

 フィリピンは日本に対し、中古の護衛艦の輸出を求めている。中古でも共同開発の枠組みとしない限り輸出できないため、日本政府内では仕様を一部変更して共同開発に位置づけることを検討している。こうした護衛艦の輸出の構想はインドネシアとの間にもある。

 装備品の輸出の拡大は、相手国との安保協力を深めることにもつながる。同じ装備品を使っている国とは、修理や部品の調達などでも協力できるだろう。

 ロシアの侵略を受けるウクライナは、戦争開始当時、戦力面で極めて不利とされた。それでも戦闘を長期間継続できているのは、武器を欧米の支援に頼るだけでなく、ウクライナ国内で攻撃型ドローンなどを製造しているためとされる。

 島国の日本で、有事の際に武器や弾薬を国内で十分に調達できなければ、継戦能力を維持できまい。防衛産業の成長を促していくことは喫緊の課題だろう。

 日本は長年、武器輸出を事実上禁じてきた。防衛産業の納入先は自衛隊に限られ、生産能力は弱体化した。

 防衛装備品を製造する国内企業には、風評などのリスクへの警戒もあり、新たな装備品の開発などに積極的に取り組んできたとは言えない。防衛産業を成長分野に位置づけ、生産基盤の強化を図っていくことが求められている。

 5類型を撤廃した場合、日本が世界各地の紛争を助長しかねないと懸念する声もある。これに対して自民党は、防衛装備移転3原則を引き続き維持するとしている。3原則は、紛争当事国への移転禁止や、装備移転による平和貢献、相手国の適正な装備品の管理などを定めている。

 国際社会から高い評価を受けている日本の平和国家としての歩みを生かしながら、自衛力の基盤を強化したい。

霜月荘六(政治評論家)

(2025年12月18日付『朝雲』より)

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