創刊70年を越える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
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時の焦点<国内>
日豪2プラス2
同志国の関係強化進めよ
軍拡を進める中国は、今では米海軍を上回る規模の艦艇を保有し、近代化も急速に進めている。他方、「自国第一」を掲げる米国は、同盟関係や多国間の協力を軽視しがちだ。国際情勢が複雑化するなか、日本と豪州が連携を深める意義は大きい。
日豪の外務・防衛担当閣僚による協議(日豪2プラス2)が東京都内で開かれた。終了後に4閣僚は共同声明を発表し、自衛隊と豪州軍で実践的かつ高度な共同訓練を実施していく方針などを明らかにした。
日本と豪州間に、日米のような安全保障条約はない。とはいえ、近年は、同志国として同盟国並みの協力体制を構築しつつある。
2022年には、自衛隊と豪州軍が共同訓練をしやすくするため、弾薬などを融通し合う「円滑化協定(RAA)」を締結した。豪州は先月、海上自衛隊の最新鋭護衛艦「もがみ型」の改良型の導入を決めた。
中国軍は今年2月、豪州とニュージーランドの間の公海に駆逐艦や補給艦などを展開して実弾演習を行うなど、豪州に対しても威圧的な行動を繰り返している。豪州は日本を、アジア太平洋地域の安全を確保する上で、重要な協力相手とみているようだ。
日本は「もがみ型」を24隻配備し、豪州は11隻を日本と共同開発する予定だ。計30隻以上の同じ艦艇をアジア太平洋や南シナ海で運用することは、中国への抑止につながるだろう。
「もがみ型」の共同開発に関する正式契約は、来年前半に予定されている。政府は、共同開発する護衛艦にどのような装備を搭載するか、豪州と緊密に協議し、確実に契約にこぎ着ける必要がある。
豪州の同盟国であるニュージーランドにも、護衛艦を更新する計画があるという。日本政府は、ニュージーランドにも共同開発を呼びかけてはどうか。
今回の2プラス2では、緊急時に第三国から日豪両国民を退避させる場合に、協力することを盛り込んだ覚書も交わした。同様の内容の覚書の締結は、昨年の韓国に続き2例目だ。
昨年5月、仏領ニューカレドニアで暴動が起きた際には、豪州軍が派遣した輸送機に現地の日本人が同乗したこともある。日豪で平時から避難計画をすり合わせておきたい。
日豪のほか、日英も重要なパートナーになりつつある。先月、自衛隊と米英豪軍などが西太平洋で共同訓練を実施した際には、海自の護衛艦「かが」に、英軍の戦闘機F35Bが着艦するなど、相互運用性を高める取り組みが行われた。
その後、英国の空母が4年ぶりに日本に寄港した。
日英伊による次期戦闘機の開発を含め、英国との連携もしっかりと進めていくことが大切だ。
夏川明雄(政治評論家)
(2025年9月11日付『朝雲』より)