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時の焦点<国内>

日米豪印会談

結束し挑発に対応せよ

 太平洋での影響力拡大を目指す中国が、挑発行動に出ている。日米豪印の4カ国は自由な国際秩序を守るため、さらに結束を強める必要がある。

 4カ国の協力枠組み「クアッド」の外相会談が米ワシントンで開かれ、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、協力を継続することで一致した。

 共同声明には、重要鉱物のサプライチェーン(供給網)確保に向けた協力を明記した。レアアース(希土類)などの重要鉱物を大量に生産する中国は、その輸出を外交カードに使って他国に圧力をかけている。日米豪印としては、重要鉱物を自ら確保し、中国に対抗する狙いがある。

 具体的には東南アジアの廃棄物処理場などで、パソコンなどの電子機器から重要鉱物を取り出し、再利用することを想定している。

 地域の主要な民主主義国が、より幅広い分野で連携する方針を確認した意義は大きい。岩屋外相は会談後、「クアッドの結束の強さと重要性を国際社会に示すことができた」と強調した。

 外相会談は、1月の第2次トランプ米政権後2回目となる。今秋にはインドでクアッド首脳会談が予定されている。

 「米国第一」を掲げるトランプ大統領の下、多国間の枠組み軽視が目立つ米国だが、クアッドについては強化する方針だ。

 太平洋では中国海軍の活動が活発化している。米単独での対処が難しくなっていることが、クアッド重視の背景にあるとみられる。

 6月には、中国の空母「遼寧」と「山東」が、西太平洋で戦闘機を発着艦させた。太平洋で中国空母の同時展開が確認されたのは初めてのことだ。

 このうち遼寧は、伊豆諸島から米軍の拠点であるグアムを結ぶ「第2列島線」の東側で活動していた。中国の空母としては、これも初めてという。

 西太平洋の南鳥島周辺では、日本の排他的経済水域(EEZ)の海底に豊富なレアアースが存在する。中国海軍がこの地域で艦艇を積極的に運用しているのは、日本の海底資源を狙った動きとの見方が強い。

 クアッドの枠組みを利用し、4カ国で協力して採掘を事業化することも一案ではないか。中国の活動を抑止する効果が期待できるだろう。

 クアッドに合わせ、日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)も開く予定だったが、見送られた。米国から防衛費の増額を要求されることを警戒した日本の要望とされる。

 2プラス2は、在日米軍再編や沖縄の基地負担軽減などを議論する枠組みだ。昨年からは、核を含む戦力で日本を守る「拡大抑止」の協議も行っている。

 日本がそうした重要な協議を見送るようでは話にならない。米側に防衛費の引き上げを求められた場合、日本の取り組みを丁寧に説明し、理解を得ていくのが同盟のあるべき姿だろう。

霜月荘六(政治評論家)

(2025年7月17日付『朝雲』より)

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