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時の焦点<海外>

イラン核施設

米軍、B2機編隊で攻撃

 米軍は6月21日夜(東部時間)、イランの核施設3カ所を攻撃した。作戦コード名は「ミッドナイト・ハンマー」。ウラン濃縮能力と核兵器保有の脅威を除去するため、「テロ支援国家ナンバーワン」(トランプ大統領)に鉄ついを下したわけだ。

 作戦完了後、ホワイトハウスはホームページに大統領メッセージを載せた。「米軍はフォルドゥ、ナタンズ、イスファハンのイラン核施設を攻撃し、成功裏に終了した。作戦に参加した全航空機がもうイランの領空外で、無事に帰還しつつある。偉大な米国の戦士たち、おめでとう。この作戦ができる軍隊は世界で米軍だけだ」

 トランプ大統領は同夜10時、ホワイトハウスから国民に向けて演説した。大統領は「イランの主要なウラン濃縮施設は完全に破壊された。攻撃は見事な軍事的成功をおさめたと世界に報告できる」と宣言した。

 「イランは過去40年、『米国に死を、イスラエルに死を』と言い続け、米国民を殺害し、道端に仕掛けた爆弾で人々の腕や脚を吹き飛ばしてきた」と数々のテロ活動を非難。

 そして、イランが進路を変えなければ、米国も対抗策を取る考えを明確にし、「平和を選択するのか、これまで以上の悲劇を選ぶのか。多くの標的が残っていることを忘れるな」と威嚇し、「平和が速やかに来ないなら、米国は他の標的を正確かつスピーディーに攻撃する」と警告した。

 翌22日午前8時、ヘグセス国防長官とケイン統合参謀本部議長が国防総省で記者会見し、作戦の詳細を明らかにした。

 同長官は攻撃に関し、「体制の転換を目的としたものではない」と説明し、「大統領の命令に即応できるように、数カ月にわたり配置と準備を重ねてきた」と述べた。

 同統参議長によると、今作戦では、ミズーリ州ホワイトマン空軍基地からステルス爆撃機B2が出撃し、14発のバンカーバスターを投下した。

 また、潜水艦発射巡航ミサイル「トマホーク」20発以上、軍用機125機以上が投入された。

 同議長によれば、今作戦がB2機を使用したこれまでで最大の攻撃。またB2機の飛行距離も、アフガニスタン戦争の初期の2001年10月以来、最長だったという。

 ヘグセス長官が「最高レベルの機密保持が必要だった」と認めた通り、米政府は陽動策を練り、イラン指導部が「もう少し時間稼ぎが可能」と考える方向に誘導した。

 ネタニヤフ・イスラエル首相との不仲説を流し、ホワイトハウスのレビット報道官が6月19日(攻撃の2日前)、攻撃するかどうかは2週間以内に決定との大統領声明を発表した。FOXテレビの軍事専門記者ジェニファー・グリフィンも21日夜、陽動作戦の例を挙げていた。

 B2機の編隊が西方グアムへ飛行し、イラン奇襲のためのおとりになった。バンカーバスターを搭載した別のB2機編隊は東方へ向かった。

 今回の攻撃ではリークがなかった。ホワイトハウスも国防総省も機密を守ったのだ。グリフィン記者も認めるように、ワシントンでは印象的な話だ。

草野 徹(外交評論家)

(2025年6月26日付『朝雲』より)

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