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時の焦点<国内>

通常国会閉幕

少数与党の厳しさ露わに

 第217通常国会が閉幕した。政府が新たに提出した59法案のうち、58本が成立したことは成果と言えるだろう。

 一方で、少数与党が野党の要求に応じて譲歩する場面も目立ち、負担を伴う難題は先送りされた。「熟議の国会」には程遠かったと言わざるを得ない。

 今国会では、重要インフラへのサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の関連法が成立した。サイバー攻撃が日常的に起きていることを考えれば、従来の「受け身」の対処を改め、積極的に相手の攻撃を無効化できるようにする意義は大きい。自衛隊と警察の協力体制を早急に築いてもらいたい。

 公立学校教員の待遇を改善する改正教員給与特別措置法が成立したことも評価できる。教員の残業代の代わりに支給される「教職調整額」の引き上げを、教員の質の向上につなげていくことが大切だ。

 年金改革関連法も成立したが、基礎年金を充実させる抜本改革は、2029年の財政検証後に検討するという。それで公的年金への信頼を維持できるのか。

 バラマキ色が強い政策も目立った。自民、公明両党は、今年度予算に協力してもらうため、日本維新の会が求めていた高校授業料の無償化を受け入れた。

 既に高校無償化を実施している自治体では、「公立離れ」が生じるなど弊害も起きている。政府が無償化の妥当性や効果を十分に検討したとは言えまい。全国での無償化に年間数千億円を投じる意義があるのか、疑問が拭えない。

 医療費が高額になった場合に患者の負担を抑える高額療養費制度の見直しは、野党や患者団体から批判を浴び、先送りされた。増え続ける医療費の削減をどう実現していくかは難しい課題だ。

 国会の閉会を踏まえ、政府は参院選の日程を「7月3日公示・20日投開票」とする。3連休の中日に大型国政選挙の投票日を設定するのは極めて異例だ。

 3年前の参院選では、期日前投票が35%に上った。期日前は定着していると言えるだろう。ただ、投票率を上げることは政治の責務である。旅行に出かける人も多い3連休の中日を参院選投票日にすることが、果たして妥当なのか。

 参院選を占うと言われる東京都議選は、自民党にとって厳しい結果に終わった。国政への不満も影響したとみられている。

 石破首相は、物価高対策として全国民に2万円を給付する考えを示している。この給付を参院選で自民党の目玉公約とする考えだ。

 ただ、政府は今春にも現金の給付を検討したが、世論調査で不評だったため、見送った。選挙が近づくと、安易なバラマキに走る政権の姿勢は残念だ。

夏川明雄(政治評論家)

(2025年6月26日付『朝雲』より)

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