創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
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朝雲寸言

 

 国家の軍事力を計る指標はさまざまである。戦闘機、艦船、戦車などの数量や軍事費などは比較されることが多い。中でも労働人口に占める兵士の比率はその国の平和度を示す指標と考えられている。

 我が国の労働人口に占める自衛官の比率は0・39%。順位で見れば166カ国中の129位である。ちなみに1位はイラクで9・8%、2位は北朝鮮で9・1%と突出している。

 この指標の世界平均が1・33%、米国が0・94%であることから普通以上の規模の国家の場合、100人に一人が軍人というのが世界標準といえる。もちろん人口構成や一人当たりのGDP、失業率の違いなど一律に比較することが無理だというのも理解できる。しかし軍事力を誇示する複数の独裁国家に隣接する我が国の人的防衛力が国力に比し著しく低いことは間違いない。

 今年度も自衛官候補生の募集は厳しかった。新年度も募集の厳しさは変わらないだろう。採用年齢の引き上げ、女性自衛官の採用数の拡大、地方協力本部の増員などの施策を打ち出しても抜本的な解決策となっていないようだ。

 一部の識者はAI、ドローンなどの導入により徹底的な省力化を図るべきだと主張する。しかしロボットなどの無人兵器は戦いのニーズから生まれるべきもので、人的な戦闘力を補完するためのものであってはいけないと思う。

 国家の防衛力の中心にあるのは国民の力である。本質的な議論が必要である。

(2023年3月30日付『朝雲』より)

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