創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
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朝雲寸言
敗戦後に自衛隊の前身組織が発足したころ、戦前・戦時中への反省から、戦車を「特車」と呼ぶなど国防用語の作り替えが相次いだ。その名残はいまだに多く、普通科、特科、施設科、護衛艦といった用語があふれている。
一方で、それらの用語を英語などに翻訳する際は各国の軍人に理解されやすいよう、陸自1佐であればカーネル(大佐)といった具合に旧軍式であると同時に国際標準でもある呼称を用いている。日本で開催される防衛関係の国際会議で、日本人の通訳が登壇する自衛官を紹介するとき「◎◎大佐」などのように一足先に国際標準化して呼んでしまうことも起きている。
「作戦という用語も長らくタブーで、仕方なく運用と呼んできたが、2020年に空自が宇宙作戦隊という名称の新組織の設置を決めた時は驚いたよ。時代は変わったね」とある元陸自将官がしみじみ語るのを聞いた。それを聞いて初めて、そういえば報道でも特に問題視されていなかったことに気づいた。
実は自衛隊以外では、京都市消防が市役所裏の別館に「作戦室」を置いたり、総務省消防庁が大規模災害時に使う大部屋の机に「参謀席」と書いた札を並べたりするなど、旧軍用語がごく自然に使われるようになっているのも事実だ。旧軍用語ではあるが国際標準でもある呼称に改めることをためらっているのは、もしかすると防衛省・自衛隊の惰性的な自制なのかもしれない。
(2023年3月23日付『朝雲』より)