創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
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朝雲寸言

 

 「誰が島を守るのか 沖縄 若き自衛隊員の葛藤」というNHK番組が何回か再放送されている。沖縄は先の大戦で苛烈な地上戦の地となり、それ故の反戦感情から返還後も自衛官募集が困難な時期が続いた。それでも地雷除去や急患輸送を通じ県民の眼差しも少しずつ変化。番組は、任官した沖縄出身の2人の若者が訓練を経て自衛官としての自覚を強めていく過程を淡々と追った秀作だ。

 番組のハイライトは、うち1人の若者と、沖縄戦で辛うじて生き残った彼の祖母との対話だ。現存する脅威から故郷を守りたいと願う孫と、「戦争はいけない。命を大切に」と諭す祖母。双方の思いにそれぞれ真実が含まれるが、孫の現実主義と祖母の絶対平和主義はかみ合わない。

 このすれ違いは、核兵器の脅威から日本を守るため日米同盟を通じた核抑止体制が不可欠とする考え方と、「核兵器のない世界を」と祈る立場の対立と相似しており、両立は容易ではない。

 ただ確かなこともある。自衛隊は絶対平和主義を唱える人々をも脅威から守り、日米安保体制は核抑止に寄与していることだ。絶対平和主義者がそれを認めたがらないにしても、である。だから若い隊員たちよ、どうか思い悩むことなく訓練に励んでほしい。そんな彼らを導く人々には、脅威国が日本の純朴な平和主義者を巧妙に取り込み、国の守りの改善にブレーキをかけうるということも若者たちに気づかせてほしい。

(2023年2月16日付『朝雲』より)

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