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朝雲寸言

 

 先日、とある弁護士の方々の勉強会に招かれて台湾有事について話す機会があった。中国と台湾を巡る近年の情勢やもし中国が台湾を軍事的に侵攻するとすれば、どのような状況になるかを知りたいというのが勉強会の目的であった。

 中台紛争における米国の立場と極東アジアにおける配置、そして我が国の南西諸島対処を中心とした防衛力整備の現況を踏まえた上で彼らに我が国の白紙的な選択肢を提示した。

 (1)武力行使を含め台湾を防衛する米国を支援する(2)武力行使せず米軍の行動を支援する(3)人道支援や救難活動、経済封鎖など我が国独自の支援活動を行う(4)中立を宣言し我が国領域を保全するという4つの選択肢である。予想の範囲内とはいえ参加者のほとんどが(4)の中立を選んだのはさすがに驚いた。

 そこで視点を変えて中国の立場から日本と米国を見ることを提案した。あらゆる手段を尽くして「ひとつの中国」を達成することが国家目標である中国にとって日本と米国は不可分の脅威、すなわち敵なのであると。

 中立という選択肢は「力による現状変更」を暗黙に認めることと同じではないかと問いかけた。彼らの底流に流れるのは暴力に対する圧倒的な忌避感である。

 法律の世界に生きる人々にとって世界が法ではなく力によって支配されている現状はやるせないことなのかもしれない。全く同感である。しかしそれが世界の現実なのだ。

(2025年7月31日付『朝雲』より)

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