創刊70年を越える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です
朝雲寸言
日本海側は大雪、太平洋側は晴れて乾燥。毎年のことだが今年の冬は両者の違いが著しい。豪雪地として知られる青森県酸ヶ湯で積雪量が5メートルを超える一方で太平洋側はほとんど雨が降っていない。東京は昨年末から2月までの降雨量が観測史上最少となった。
そのせいか今年は火災の報道をよく目にする。岩手県大船渡市で発生した山火事は乾燥と折からの強風で燃え広がり4000人を超える人々に避難指示が出された。消防車の入らない急斜面の山林の火事を消火することは難しい。自衛隊の大型ヘリの空中消火を含め関係者の懸命な消火活動が続いた。
まだ寒い東北の3月、避難所に身を寄せる人々の姿を見ながら、ふと東日本大震災の記憶が蘇った。災害派遣が終了した後もしばらくの間、脳裏に焼き付いた津波災害の映像がフラッシュバックとなって呼び起こされることがあった。
東北に未曽有の被害をもたらした震災の日から早14年が過ぎた。「去る者は日々に疎し」という。忸怩(じくじ)たるものもあるが忘れることで人は次に進むことができるのかもしれない。
震災で海辺の住み慣れた家を失い此度(こたび)の山火事で建て替えた我が家を失った方がいる。何という運命だろう。
そんな厳しい現実の中でも差し伸べる温かい支援の手がある。過去の災害の教訓は確実に現地に生かされている。寒さも彼岸まで、そろそろ桜の便りも聞こえてきそうなこの頃である。
(2025年3月13日付『朝雲』より)