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ブックレビュー

小泉八雲と水木しげるに学ぶ 異界の歩き方 小泉 凡監修


 異界とは、遠く離れた幻想の世界ではなく、私たちのすぐ隣にあるもうひとつの現実かもしれない――。

 本書は、怪談と妖怪という異界の表現者である小泉八雲と水木しげるの人生と思想をたどりながら、「見えないもの」をどう受け止め、描いてきたかを探る一冊だ。

 小泉八雲の曾孫であり、研究者でもある小泉凡氏が監修を務め、二人の生い立ちや体験、創作の背景にある「異界へのまなざし」を丁寧に紐(ひも)解(と)く。巻末には、彼らにゆかりのある土地を紹介する「異界タウン探訪」も収録され、読者を実際の旅へと誘う構成になっている。

 ちょうど今、NHKでは連続テレビ小説『ばけばけ』を放送中。小泉八雲とその妻・セツをモデルにしたこのドラマでは、明治の日本を舞台に、異文化を越えて結ばれた二人の姿が描かれている。本書を手にすれば、ドラマの背景にある実像や精神世界がより深く味わえるだろう。

 異界を歩くとは、世界を深く味わうこと。現代社会の喧騒の中でこそ、こうした感性が必要なのかもしれない。

 (マイクロマガジン社刊、1760円)

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