創刊70年を越える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

ブックレビュー

ゲーム作家 小島秀夫論 エスピオナージ・オペラ 藤田 直哉著


 小島秀夫監督の代表作「メタルギア・ソリッド」シリーズはただの戦争ゲームではない。スパイアクションで、SFの要素もあり核抑止や安全保障論の教科書でもある。そして、愛を問う物語でもある。

 小島監督の作品はどれも小説のような奥行きと映画のようなユーモアとボリューム感がある。

 日本映画大学准教授の著者は、映画「007」のようなスパイ・エンターテインメントで、国際政治と個人の愛憎を結びつけて描く様式を「エスピオナージ・オペラ」と名付けた。

 小島監督は冷戦や核戦争を何に結びつけているか、作中の描写をはじめ、過去の発言や著書から分析している。

 本書はシリーズ作品の象徴的なシーンやせりふを精緻に読み解き、ゲームがプレイヤーに突きつけるジレンマを解説。作中での不可解なキャラクターの言動や、監督が込めたメッセージの真意を考察する。

 1990年代から核抑止論やAI(人工知能)を通じて情報が処理される社会のあり方に警鐘を鳴らしつづけてきた小島監督。そんな天才の脳内を垣間見ることができる一冊だ。

 (作品社刊、2,970円)

最新ニュースLATEST NEWS