創刊70年を越える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
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ブックレビュー
奪われた集中力 もう一度“じっくり”考えるための方法 ヨハン・ハリ著、福井 昌子訳

現代人の集中力が「失われた」のではなく「奪われている」とする視点から、注意力低下の原因を社会構造に求めたノンフィクション作品。著者は世界中の専門家に取材し、スマートフォンやSNS、マルチタスク、情報過多、教育制度の変化などが複合的に集中力を奪っていると指摘。
本書では、個人の努力だけでは集中力を取り戻すことは難しく、社会全体を見直す必要があると訴える。例えば、監視型テクノロジーの台頭や、持続的読書の崩壊、フロー状態の喪失などが注意力の分断を加速させていると分析する。
著者自身の体験や旅の記録も交えながら、読者が自身の生活と照らし合わせて考えられる構成となっている。
集中力の回復には、環境の整備と制度的な改革が不可欠であるとし、企業や教育現場、家庭における実践的な提案も示している。
情報化社会に生きるすべての人にとって、豊かな時間を取り戻すためのきっかけとなる一冊だ。
(作品社刊、2,970円)