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ブックレビュー
ご利益を科学する 宗教の儀式や祈りはなぜ効くのか D・デステノ著、児島 修訳

七五三のお祝いによって、子育てへの貢献度が上昇する。仏教の瞑想は、敵対心を減らして思いやりを増やす。キリスト教の神への祈りは、共感力を高める――。
日々の生活や人生の節目節目に行ってきた宗教的慣習には、科学的に見ても実際に良い効果がある。心理学の最新知見によれば、こうしたより良い人生へと導く慣習から宗教的な要素を取り除いてもメリットはなくならないという。
著者は、宗教的儀式がもたらす心理的・生理的な変化を実験データと共に紹介しながら、信仰の有無に関係なく誰もがその恩恵を受けられると説く。例えば、感謝の気持ちを表す行為は免疫力を高め、ストレスを軽減することが分かっている。これは宗教儀式の一部として行われることが多いが、日常の習慣として取り入れることも可能だ。
また、「甘え」に相当する言葉が英語をはじめとする言語に存在しないという指摘は、文化的背景が人間関係の築き方に与える影響を考える上で興味深い。
「信じる者は救われる」は科学的に正しい。伝統的な儀式や祈りが人を幸せにすると説く本書は、宗教と科学の接点を探る一冊だ。
(白揚社刊、3,080円)