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ブックレビュー
世界の終末に読む軍事学 兵頭 二十八著

本書は「戦争はなぜ起こるのか?」という根源的な問いから著者が導き出した「権力理論」を軸に展開される。著者は元陸自のフリーライターで、『自転車で勝てた戦争があった』『日本史の謎は地政学で解け』など多数の著作を持つ。
本書では、エジプト王朝のピラミッド建設やペルシャ帝国のイスラム化、中国儒教の権力風土への奉仕、そして現代の認知戦や無人兵器の台頭まで、古今東西の事象を歴史と軍事理論を融合させた独自の視点で概観。戦争の根底にある「安全・安価・有利」を求める政治と権力の構造を読み解いていく。
「地球上の誰ひとりとして『権力』の不足を覚えない未来社会が到来した暁には、必然的に、戦争は起こらなくなります」と著者は指摘する。しかし、権力に定量はなく、全人類が「もう十分」とするリミットは存在しない。そうである以上、我々は常に最悪事態を考え、リスクに備える必要があるのだ。
あとがきによれば、著者は近くウクライナに対するロシアの侵略戦争を、ドローンの進化の視点からまとめた新作を発表する予定。次回作にも注目したい。
(並木書房刊、1,980円)