創刊70年を越える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
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ブックレビュー
日本の防衛政策 冷戦後の30年と現在 杉本 康士著
1995年の防衛計画の大綱から2022年末の安保3文書までの策定過程を、政権中枢の証言をもとに丹念に描いた力作だ。
新聞記者である著者は、岸田文雄前首相や石破茂元防衛相ら歴代の政策担当者に加え、自衛隊制服組への取材を通じて、政策転換の背景を明らかにした。
冷戦終結後の安全保障環境の変化に対し、日本政府がいかに対応してきたかを、理想と現実の間で揺れる政策決定の現場を詳細につづる。
また、「防衛力の抜本的強化」を実現するために、政府は27年度までの5年間で防衛費を43兆円と定めた。その背景には防衛費を巡り、財務省と防衛省との激しい攻防があった。
ロシアのウクライナ侵攻、海洋進出を強める中国、北朝鮮による弾道ミサイル発射…。近年の日本を取り巻く安全保障環境は悪化の一途をたどる。こうした中で、当時の岸田首相が決断を下す。
著者は「戦略は、出来上がったその日から書き換えが始まる」と記し、歴史のただ中にある政策を記録する意義を強調する。
日本の防衛政策の歴史をたどることで、これまで、そしてこれからの世界情勢を読み解くことができるだろう。
(作品社刊、2970円)