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ブックレビュー

日本外交をどう考えるか 日米安保・歴史問題から沖縄まで 波多野 澄雄、宮城 大蔵編著


 本書は、戦後日本の外交政策を多角的に読み解く一冊だ。日米安保体制の変遷、歴史認識をめぐる対外関係、そして沖縄の基地問題まで、さまざまな外交上の課題をテーマ別に掘り下げている。

 印象的なのは、外交の実践において歴史的文脈の理解がいかに重要かという点だ。ジャーナリスト・清沢洌(きよし)の「外交史の知識を欠いた外交は根のない花である」という言葉が紹介されるが、これが本書全体の底流にあるのはいうまでもない。歴史を踏まえずに行われる外交は、一時は耳目を惹(ひ)くかもしれないが、持続性も説得力も欠くとの警句が、現代日本の課題に鋭く突き刺さる。

 沖縄問題についても、基地の存在が地域住民に与える影響と、国防上の必要性との間で揺れる日本政府の姿勢が浮き彫りになる。外交を「遠い世界の話」としてではなく、私たちの暮らしと密接に関わる現実として捉える契機を与えてくれる。

 巻末には外交史をより深く学ぶための参考文献が紹介されており、読者がさらに学びを広げる道筋が示されている。外交に関心がある人はもちろん、これから学びたい人にも薦めたい一冊だ。

(慶應義塾大学出版会刊、2640円)

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