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ブックレビュー

40℃超えの日本列島で ヒトは生きていけるのか 永島 計著


 世界各地で「記録的な猛暑」「危険な暑さ」との言葉が繰り返される。国連のグテーレス事務総長は「地球沸騰の時代が来た」と警鐘を鳴らす。冗談でも大げさでもなく、「40℃超えの日本列島」がすぐそこまで迫っているのである。

 本書は暑さのリスク対策を生理学の観点から明らかにしたもの。身体が温度を感じる仕組みや脳と体温の関係、動物たちから学ぶ暑さ対策などを紹介し、猛暑を乗り切るヒントを提示する。

 今後ますます問題になってくるであろう熱中症についても解説する。熱中症とは高体温による組織や臓器の障害で、明確な診断基準があるわけではない。対処としては「氷水に浸かる」「気化熱を利用して冷却する」など、とにかく身体を冷やすことが最優先だ。

 一方で、著者は現在の暑さの問題を、安易に地球温暖化に結びつける傾向にも疑問を投げかける。なぜならそこには都市の構造物の変化や人口分布の問題、人間による緑地破壊などが関係しているからだ。

 「40℃超えの日本列島に住んでいけなくはないが、人の過ちのために40℃超えの場所にしてはいけない」との著者の警句に深くうなずける。

 (化学同人刊、990円)

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