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ブックレビュー

科学技術の軍事利用 橳島 次郎著


 近年、AIや心身の強化改造、人体実験などの軍事利用の是非が喫緊の問題として浮上している。「軍民両用」ははたして、どこまで許されるべきなのか――。長年生命倫理の研究をしてきた著者が、「化学・技術」と「軍事」の結びつきの歴史をたどり、その関わりについて取り上げた。

 科学の原点は古代ギリシアで盛んになった自然哲学にさかのぼる。そこで得られた科学的知識は軍事にも利用された。そして、こうした化学・技術の軍事利用を国家規模で組織化したのが紀元前4世紀に一大帝国を築いたアレクサンドロス大王だったという。

 本書ではさらに、科学と戦争の結びつきを表すエピソードとして現代に名を遺すレオナルド・ダ・ビンチやガリレオ・ガリレイらについても触れ、「化学・技術」と「戦争・軍事」のつながりをたどる。その内容は教養を深めると共に、現代の医療や技術が戦争により発展していったことを示す。

 2部では将来に向けて想定される人工知能兵器や心身強化改造等について述べ、その是非を問う。科学・技術が進展していく現在、「軍民両用」のあり方について考えさせられる1冊だ。

 (平凡社刊、1034円)

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