創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

　東北大名誉教授で美術史家の田中英道氏と作家で予備校講師の茂木誠氏の対談本。歴史を「文献」ではなく、古代の美術品の「形象」から分析する美術史の学問の一つ「フォルモロジー」から見ると、思わぬ視点が開ける。

　例えば千葉県の芝山古墳から出土した「ユダヤ人埴輪」の形状、ユダヤの「契約の箱（アーク）」と日本の「神輿」、山伏が頭に乗せる「兜巾（ときん）」とほら貝、ユダヤ教徒が儀式で頭に乗せた「ティフィリン」とショーファー（角笛）の類似点など、興味をひかれる点は少なくない。

　日本の神事とユダヤ教、旧約聖書などに数多くみられる類似性はいったい何なのか。

　日本人の祖先が古代イスラエルの失われた支族の一つであるとする「日ユ同祖論」に眉をひそめる人は多いが、本書ではユダヤ人が渡来して縄文人や弥生人に同化したとする「日ユ同化論」を唱える。

　田中、茂木両氏の語り合う数々の事象をどう考えるかは読者によってさまざまだろう。ただ、対談本だけに読みやすく、単純に歴史ミステリーとして面白く読めるので、歴史の苦手な人にもお勧めできる。

　（ワニブックス刊、１８７０円）