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ブックレビュー

日ソ戦争史の研究 日ソ戦争史研究会編


 第2次世界大戦終盤の1945年8月、ソ連が日ソ中立条約を一方的に破って始まった日ソ戦争は、シベリア抑留や北方領土問題など戦後の日露関係に大きな影を落としているにもかかわらず、日本の歴史学界では研究が進んでこなかった。

 本書は日本の公式史資料だけでなく、旧ソ連の公文書などを駆使して執筆された我が国初となる日ソ戦争全体に関する学術論文集だ。

 北大の白木沢旭児教授が編者を務め、日本史、ロシア史、中国史、モンゴル史、現代政治を専門とする19人の研究者が分担執筆。日ソ戦争史の全体像、さらには北東アジア規模の「グローバル・ヒストリー」としての位置づけを明らかにする。

 防衛研究所戦史研究センターの花田智之主任研究官は「日ソ戦争概観」を執筆。ロシア公文書を活用した最新の研究成果として、ソ連の極東戦略が日本による進攻に備えるものから、太平洋戦争期に満州、樺太進攻作戦に転化していく過程を浮き彫りにした。

 ロシアのウクライナ侵略を目の当たりにしている今こそ、日本の“隣国”ロシアとの関係について、改めて先の大戦から見つめ直す格好の専門書だ。全482ページ。

 (勉誠出版刊、1万3200円)

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