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ブックレビュー

経済兵器 現代戦の手段としての経済制裁 ニコラス・ミュルデル著 三浦 元博訳


 現在の世界が戦間期の不安定な秩序に似てきた最も顕著な点の一つは、昨年2月以降の大規模な対ロシア制裁が世界市場に与えた影響である。これほどの経済規模の国が国際的な制裁の標的になったのは、当時世界第7位の経済大国だったファシスト・イタリアのエチオピア侵略を罰しようとした国際連盟の試み以来である――と著者は、日本語版への序文で述べている。

 本書は第1次大戦後から第2次世界大戦勃発までの30年間に、どのように経済制裁が生まれ、現代の形に発展してきたのかを描いた歴史研究書。

 戦間期の経済制裁は、戦争への直接的反応だった。初期には戦争と平和という直接的な問題が生じて、初めて効力を発揮した。封じ込めと体制転換が制裁を使用する明確な根拠になったのは冷戦期になってからという。

 21世紀の共通の課題に立ち向かうために、これまで以上に国際協力を必要としている今、経済的圧力の限界を認識することは、平和と進歩を追求する新たな手段を見つけることを促すはずだと説いている。

 (日経BP刊、4950円)

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