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ブックレビュー

ヒトは 軍用AIを使いこなせるか ジェームズ・ジョンソン著 川村 幸城訳


 本書は軍事領域におけるAIの利用とその影響について緻密な議論を展開する。軍用AIに関心を持つ読者にとっては必読の一冊だ。訳者は陸自教研本の川村幸城1佐。

 3つの部に分かれた計8章から構成され、1部ではAIがなぜ、どのように冷戦後の戦争システムに不安定化をもたらす要因となるのかについて検討する。2部ではAIという新しい技術を取り入れる過程で米中が異なった受け止めをしているとして、米中間の戦略的競争について論じる。さらに、AIをはじめとする軍事技術の進歩が生み出す先制攻撃の脆弱性と機会が、将来の軍事的エスカレーションに不安定な影響をもたらすことを明らかにする。

 3部は事例研究を扱った4つの章から構成され、AIがもたらすエスカレーション・リスクについて考察する。

 専門的な知識と洞察を提供してくれる本書は、軍用AIの将来を考察し、戦略や安全保障政策の立案、世界事情の理解、未来予測に役立つ貴重な手引きとなると共に、軍事専門家や技術者、政策立案者などにも価値ある情報源になるだろう。

 (並木書房刊、2420円)

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