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ブックレビュー

制限戦争指導論 J・F・Cフラー著 中村 好寿訳


 「小銃が歩兵を生み出し、歩兵が民主主義をつくった」――。

 民主主義はすべての人間を平等にし、その要因をつくったのは「徴兵制」だとするフラーの論に、現代のわれわれは戸惑わずにはいられない。

 第一次世界大戦下で、イギリスの軍人として陸軍の機甲化を初めて提唱。退役後は歴史家として生涯45冊の著作を発表するなど執筆活動に尽力したフラーの代表作が本作。

 「戦争の真の目的は平和であって、勝利ではない。勝利は平和を達成する一手段に過ぎない」と語るフラーは「無制限戦争」を回避するため、時の政治家や軍人はいかなる戦争指導をするべきかを説く。

 「妥協・中庸の原則」が通用した絶対主義時代下の「制限戦争」を「『旧(ふる)き良き時代』の戦争」と捉え、フランス革命以降の悲惨な「無制限戦争」を分析し、いかなる戦争指導が戦争を拡大し、野蛮化させてきたのかを「多すぎるほどの生の材料を提示」して解明している。

 「戦略論」のリデルハートと双璧を成すフラーの異色の戦略論は、われわれに多くの示唆を与えてくれる。

 (中央公論社刊、1540円)

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