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ブックレビュー

第一次世界大戦と日本参戦 揺らぐ日英同盟と日独の攻防 飯倉 章著


 日本はなぜ第一次世界大戦に参戦したのか?  一般の歴史書では日英同盟に基づく参戦から、ドイツの東洋の拠点である山東半島や膠州湾を占領したことを軽く述べるに留まり、そこに至る経緯についての詳述が少ない。本書はあまり注目されてこなかった第一次大戦の参戦について、最新の研究を基に検証する。

 第一次大戦は1914年、オーストリア皇太子がセルビアの青年に暗殺された事件を契機にはじまる。英の参戦が確実になるなか、日本の対独参戦を強力に推し進めたのが当時の外相・加藤高明だ。

 著者はこの加藤の人物像や経歴に触れつつ、参戦に至るまでの加藤の外交交渉の様子を明らかにする。また背景として、日本に地の利があり「負けない戦争」という心理的要因があったこと、ドイツの排除が地政学的に重要であったことを指摘。主戦場となった山東省・青島での戦いを経て日英同盟が弱体化していく過程も詳しく述べる。

 戦争に至るまでの内外の動向から、戦後、日本が大国の一員として認知されるまでを幅広く紹介。公式戦史を補う形で当事者の著作や記録、意見書などを参照しており、当時を俯瞰するのに格好の書物である。

 (吉川弘文館刊、2200円)

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