創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

ブックレビュー

陸軍航空の形成 軍事組織と新技術の受容 松原 治吉郎著


 帝国陸軍は飛行機が将来の戦争においてゲームチェンジャーになると明確に認識していた――。

 本書は海軍航空に比してあまり知られていない陸軍航空に焦点を当て、その近代化に向けた建設過程を明らかにする。

 そこには、将来の戦争形態が抜本的に変化する危機感から、陸軍が第1次世界大戦の教訓を貪欲に吸収し、国際政治の潮流も利用しつつ、日本の国情に合った防衛力としての航空戦力の整備に努めた姿が浮かび上がる。

 著者は防研戦史研究センター所属の主任研究官。自身の博士論文をベースに一般向けに著した。

 キャリア官僚として自衛官の人事管理や装備品の調達・研究開発などさまざまな業務に携わってきた実務経験を生かし、帝国陸軍がいかに航空戦力という新技術を受容し、近代化を図ってきたかを詳(つまび)らかにすることで、翻って現在の我が国の防衛力整備にも通じる多くの教訓を導き出している。

 博士論文の指導教官を務めた北岡伸一東大名誉教授は「近代日本の軍事史に対する重要な貢献であり、防衛力のあり方を考える上で示唆に富む一冊だ」と本書を高く評価している。

 (錦正社刊、5940円)

最新ニュースLATEST NEWS