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ブックレビュー

ツシマ 世界が見た日本海海戦 ロテム・コーネル著 滝川 義人訳


 「対馬沖海戦が私の目を引いたのは、ずいぶん前のこと。当時は海軍士官候補生で一見したところ、力の劣る海軍が、より有力な敵を圧倒した過程に感銘を受けた」――。著者は元イスラエル海軍少佐で、イスラエルのハイファ大教授。

 1905年5月27日に発生した日本海海戦から約120年。ニュースが速報性を持ちつつあった時代の最初の現代通信戦争ともいわれるこの海戦は、なぜ日本海軍の一方的な勝利に終わったのか。そのいきさつと理由を巧みに記す。

 負け戦になった時、計算上、艦艇を追加できたロシアのバルチック艦隊。一方、補充手段がなく、勝利しか生き残る道がないという追い詰められた日本海軍。この状況が不退転の決意を生み勝利を導いた一因でもあると著者。

 本書は日露英米独の多くの資料に基づき、海戦をひっくるめて分析し、世界がこの戦いをどう評価し、その後の世界にどのような影響を与えたのかを明かした。

 本書を読めば、自分たちの過去を必ずや誇りに思うに違いないとしながらも、同時になぜ違った方向に進んだのか疑問を呈することになるだろうと著者は説く。

 (並木書房刊、2860円)

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