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ブックレビュー

封鎖法の現代的意義 長距離封鎖の再評価と地理的限定 浦口 薫著


 2度の世界大戦で強大な海軍力をいかんなく発揮したイギリス。強力な英国海軍が両大戦でいずれも敵国ドイツに実施した「長距離封鎖」は果たして合法だったのか。

 そして、そのような「海上封鎖」という手法は現代でも有効な海戦の方法であり続けているのか。この2つの疑問が本書の起点となっている。

 本書では、17世紀以降今日に至るまでの国家間の歴史、封鎖法などの関連判例や学説を網羅的に紹介、分析して長距離封鎖の合法性について評価を加えた。

 さらに、20世紀以降に海戦や海運環境の変化、第2次大戦後の戦争の違法化などの新たな国際秩序が形成されていく過程が封鎖法に与えた影響を捉え直し、その現代的意義をも明らかにした上で、過去から今後設定される「海上封鎖」に統一的な評価基準を提供しようと試みた意欲作となっている。

 現役の海上自衛官で、現在は防大准教授である著者が、令和2年12月に大阪大学大学院国際公共政策研究科より博士号を送られた論文に、大幅な加筆修正をしてまとめた本作。ページごとに注釈が加えられ、法律初学者でも分かりやすい構成となっていて読みやすい。

 (大阪大学出版会刊、4840円)

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