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ブックレビュー

終わらない戦争 復員船「鳳翔」 “終戦”までの長き航路 戸津井 康之著


 「私には、このつらい話を、後世へと伝える役目、義務があるのだと思うのです」

 本書は、日本海軍初の空母「鳳翔」に通信兵として乗船していた元海軍2等兵曹・山本重光氏が語る、第二次世界大戦終戦後の果てしない航海の物語だ。

 昭和20年8月15日。現代で「終戦記念日」とされるこの日から、さらに長く、過酷で、終わりの見えない“新たな戦い”に突入した日本軍人たちがいた。

 同年3月から7月末にかけて執拗に続いた米軍による凄絶な「呉軍港空襲」を耐えた「鳳翔」。終戦後、同艦は命令を受けて世界の戦地に残された軍人や民間人の救出に向かう「復員輸送」という新たな任務へと転じた。

 残ることを決めた元日本海軍の若き兵士たち約280人は、家族や恋人の待つ故郷へ帰ることなく復員船「鳳翔」の乗員として新たな“戦場”に出航し、4万人もの日本人を救う。

 終戦後も1年以上にわたり、地位も名誉も報酬も求めず、ただひたすらに軍人・民間人を救い続けた海の男たちの激闘の姿が、一部始終を見届けた海軍通信兵によって今明らかになる。

 (二見書房刊、1980円)

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