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ブックレビュー

冷戦終焉期の日米関係 分化する総合安全保障 山口 航著


 「1970年代の国際情勢の変化の中で最も基本的な事実は、なんと言っても、アメリカの明白な優越が、軍事面においても、経済面においても、終了したことである」――。

 1979年、時の政権大平内閣によって委嘱を受け、発足した総合安全保障研究グループはそう断言していた。

 その上で著者は「米国が内向きである今日、(中略)総合安全保障が投げかけたこの問いの重要性は、今なお色褪せていない」とする。

 冷戦終焉期に大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘の3人の総理大臣が掲げ続けた「総合安全保障」という概念。それは単なる経済や食糧を含む安全保障を意味するものではなく、自国防衛や日米安保、国際環境など「多様な手段の組合せによる総合的効果に立脚しなくてはならない」とグループが作成した報告書『総合安全保障戦略』は指摘しているとする。

 近年公開された日米の政府機密解除文書や当事者などへの聞き取りから、当時の日米両政権の政治外交を再現した本書は、今日の安全保障論議にも大きな示唆をあたえてくれる。

(吉川弘文館刊、9900円)

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