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ブックレビュー

組織・チーム・ビジネスを勝ちに導く「作戦術」思考 小川 清史著


 ベトナム戦争で米国は、個々の戦闘ではほとんど勝っていたにもかかわらず、戦争には勝てなかった。戦術レベルで勝っていたが、戦略レベルで敗れたわけだ。そこで米軍が取り入れたのが、第一次世界大戦時にロシアが確立した「作戦術」の概念だったという。

 本書ではこの「作戦術」を分かりやすくかみ砕いて解説。「戦略と戦術の中間に『作戦』というレベルを設定し、戦略がしっかりと個別の戦術に反映されているか、個別の戦術が戦略目標に寄与する内容になっているかを調整・コントロールする技術」と定義する。

 この「作戦術」の思考法が、大小問わずあらゆる組織、チーム力の向上に有効なことが分かる。本書で挙げられるテーマはウクライナの“善戦”の理由から青学大駅伝部の原監督のチームビルディング、職場の飲み会までと幅広い。元陸将、西方総監の著者が自衛官時代に経験した失敗談を含む経験談も「作戦術」の観点から解説する。

 各セクションが短く、好きな個所から気楽に読める。「がんばるな!」「気を利かせるな!」というキーワードから、2022年サッカーW杯日本対スペイン戦の「三笘の1ミリ」を分析した解説も面白い。

 (ワニブックス刊、1540円)

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