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ブックレビュー

ロシア・サイバー侵略 スコット・ジャスパー著 川村 幸城訳


 ロシアによるウクライナ侵略では、双方が戦車や火砲を繰り出す「古典的な戦い方」の様相を呈している。

 一方で、ロシアは2007年のエストニアに対するサイバー攻撃や2014年のクリミア侵攻など、正規戦の他にサイバー空間や情報・心理作戦を駆使した「ハイブリッド戦」を展開しているのは周知の通りだ。

 筆者は元米海軍大佐で、現在は米海軍大学院で上級講師を務め、米におけるサイバー政策の第一人者。

 ロシアによる巧妙なサイバー工作の特徴を「法的曖昧性」と「技術的複雑性」によるとし、サイバースペースの脆弱性につけ込み、国際ルールや規範を自らの意思に沿うように歪め、かつ「侵入・回避・欺騙(きへん)」の技術を駆使し、攻撃元として自らが特定されるのをうまく避けてきたと主張する。

 著者は本書について「ロシアのサイバー行動が紛争や競争の中でどのように機能しているかを理解する上で永続的な価値を有している」と評している。

 その言葉通り、豊富な事例と初学者にも分かりやすい「用語集」が付き、前陸自通信学校、現在は陸自教育訓練研究本部に勤務する川村幸城1陸佐の定評ある翻訳が本書のエッセンスを見事に引き出している。

 (作品社刊、2860円)

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