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ブックレビュー

幻の日本陸軍中戦車 チト +チヌ/チリ マニアックス あかぎ ひろゆき著 かの よしのり監修


 先の大戦で、日本の帝国陸軍が本土決戦に備えて開発した三式中戦車(チヌ)、四式中戦車(チト)、五式中戦車(チリ)について、現存する数少ない写真や図面などをもとに解説した本書。

 そのうち、チトは2両の試作車が製造されただけで終戦を迎え、チリに至ってはわずか1両。しかもその1両は戦後米軍に接収され、行方不明だ。

 マニアの間では「幻の戦車」と呼ばれ、人気が高い両戦車だが、特に夢があるのはチトの方。2両のうちの1両は終戦時、旧陸軍によって静岡県の浜名湖に沈められたという。

 本書では沈められたチトの発見のため、「『幻の戦車』調査プロジェクト」を立ち上げた地元・関係者団体の取り組みについても紹介している。

 写真や図などをふんだん使用し、分かりやすい書籍作りに定評のある秀和システム社と、現役予備自衛官の著者、元自衛官の監修者という強力タッグが、幻の戦車をさまざまな角度から検証した。

 併せて「日本陸軍の戦車発達史」から現在のウクライナ戦争、「戦車の間接照準射撃」などの考察まで、まさに戦車ファン垂涎の一冊に仕上がっている。

 (秀和システム刊、2750円)

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