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ブックレビュー

帝国の虜囚~日本軍捕虜収容所の現実 サラ・コブナー著 白川 貴子訳


 著者は日本研究の専門家で、米コロンビア大学「サルツマン戦争と平和研究所」の上席研究員。太平洋戦争中、日本軍は戦地で捕らえた連合国捕虜を一貫して虐待したというのが今日でも欧米の共通認識だが、果たして実際はどうだったのか。

 ジュネーブの赤十字国際委員会の資料室で偶然見つけた報告書をきっかけに、欧米の学界では決して主流なテーマではない連合軍捕虜について徹底調査することを決意。

 日本と各国の膨大な史資料と生存者へのインタビューを基に、一切の偏見を捨て、極めて学術的・客観的な手法で、先の大戦の日本軍による捕虜の扱いとその背景を多角的視点で丁寧に描き出していく。

 執筆に当たっては、防衛研究所戦史研究センターの立川京一戦史研究室長=本紙3面「防研セミナー」参照=の研究成果が多く引用されている。

 学術書でありながら、著者と共に日本の近現代史について探求の旅を進めていく過程は、さながら秀逸なノンフィクション作品のようであり、鋭く的確な分析はルース・ベネディクトの不朽の書『菊と刀』を想起させる。

 (みすず書房刊、5280円)

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