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ブックレビュー

あのSFはどこまで 実現できるのか 米持 幸寿著


 漫画「バビル2世」のバベルの塔、映画「ブレードランナー」のレプリカント、「ターミネーター」に登場した液体金属ボディーを持つT―1000……。昭和から平成にかけ、見る者を魅了してきたSF漫画、ドラマ、映画などに登場した数々のテクノロジーは、現代の科学技術でどこまで実現できるのか。

 システム情報科学博士で、現在は音声対話インターフェースの研究・開発に携わる著者が9作品を選び、現在実用化しているIT、自動運転、AI、音声認識などの技術がSFの名作の世界にどこまで迫っているのかを考察する。

 テーマがSFなので堅苦しさがなく、知っているつもりが案外知らなかったことに納得させられる箇所が多い。例えば町工場で物を運ぶ、積み上げるという単純な動作がロボットは苦手なのだという。運んでいる途中で人が通った時に、待ったり避けたりするといった例外処理にロボットは対応できないそうだ。

 ターミネーターが標的を追跡する際、視界に現れる文字列から、ターミネーターを製造したサイバーダイン社の正体を示唆するなど、どの作品も真面目に考察しているのがかえって楽しい。手軽に読める1冊だ。

 (集英社刊、913円)

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