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ブックレビュー

成長戦略は台湾に学べ 御堂 裕実子著


 新型コロナが世界中に流行する前、台湾人の約4・8人に一人が日本を訪れている。この数値から分かるように台湾は常に日本に好意的な視線を向け、関係の深化を望んできた。一方、日本側から台湾を訪れた人は約58人に一人、やや台湾への関心が希薄といえる。そうしたアンバランスな環境を少しでも改善し、日台の「両思いの懸け橋になりたい」とビジネスコンサルタントの筆者は語る。本書では台湾人の人柄や考え方などその素顔を紹介し、グローバルに発展を遂げてきた強さの秘密に迫る。

 台湾の人々がビジネスで重視するのはスピードと合理性だ。チャットを駆使してトップが決断、すぐに行動に移す。「とりあえずやってみよう」の意識でビジネスチャンスをものにする。「持ち帰って検討」と結論を先延ばしにする日本の慎重さとは対照的だ。他方で義理と人情も大切にする。台湾の人々は幼い頃から儒教を学び「長幼の序」を身につける。東日本大震災では発生直後に200億円もの義援金を日本に届けた。

 本書を読むと、相反するような合理性と人情、そして常に物事を前向きに捉える姿勢が発展のエネルギーになっていることが分かる。台湾とその国の人々が身近に感じられる一冊だ。

 (かんき出版刊、1760円)

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