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ブックレビュー

三笠宮崇仁親王 三笠宮崇仁親王伝記刊行委員会編


 昭和天皇の末弟で戦中は皇族軍人、戦後は古代オリエント史研究者、晩年は皇族の長老として類い稀な足跡を残した三笠宮崇仁(たかひと)親王(1915~2016年)の100年の生涯を綴った伝記。

 孫の彬子(あきこ)女王が委員長を務め、歴史学者らで構成する伝記刊行委員会が編纂(さん)した。防研戦史研究センター史料室も史料提供などの協力を行った。

 確実な史資料に基づく実録をはじめ、研究者らによる論考・解説、百合子妃へのインタビューを通じたオーラルヒストリー(口述史)によってその人物像に迫る。

 陸大卒業後は「若杉参謀」(秘匿名)として南京の支那派遣軍総司令部に赴任するも、現地の実情に衝撃を受け、日中戦争の終結を模索。帰国前に自身の講話をまとめた冊子で、陸軍内では「危険文書」とされ直ちに焼却処分となった『支那事変に対する日本人としての内省』など、防研戦史研究センター所蔵の貴重な史料も収録している。

 戦後は学者として真摯(しんし)に歴史と向き合い、戦史から教訓を見出そうとしてきた姿もうかがい知ることができる。全1332ページ。大正から平成まで皇室の近現代史が鮮やかによみがえる。

 (吉川弘文館刊、1万1000円)

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