創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

ブックレビュー

桜華 防衛大学校女子卒業生の戦い 武田 頼政著


 2021年、週刊文春に連載していた「日本を護る女たち 防衛大学校女子卒業生の戦い」に大幅な加筆修正を加えた自衛隊深層ノンフィクション。あらゆる職種の防大出身女性幹部自衛官9人を徹底取材し、任務の実際から妻、母、女性としてのプライベートな悩みや葛藤を浮き彫りにする。

 防大が女性の入校を受け入れたのは40期(1992年入校)から。その「女子1期生」が入校した当時は「防大に女はいらない」といった気風があった。訓練の厳しさは男女の区別なく、それは体育においても同じ。体力面のハンデなどは考慮もされず、「お前らいらねえ」などと直接言われることもあったという。

 しかし、女子1期生たちには理不尽を跳ね返す無類の負けず嫌いがそろっていた。当時を振り返る彼女たちの言葉は淡々としてはいるものの、パイオニアとしての自信がにじむ。

 あれから30年が過ぎ、今では多くの防大女子卒業生が活躍しているが、結婚、出産、育児、離婚や出世など、さまざま壁に突き当たるたびに彼女たちがどう悩み、解決し、あるいは解決できずに国防の最前線で欠かせない戦力として働き続けているのかが描かれる。9人の今後に期待が高まる。

 (文芸春秋刊、1980円)

最新ニュースLATEST NEWS