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ブックレビュー

日・米国家の命運 怒りのミッドウェイ海戦 寳部 健次著


 太平洋戦争の大きな転換点の一つと言われる「ミッドウェイ海戦」(1942年)――。それまで無敵を誇っていた日本の連合艦隊は「赤城」「加賀」「蒼龍」「飛龍」の主力空母4隻と艦載機300機を一挙に失い、3000人余に上る戦死者を出した。日本海軍はなぜこの戦いに敗れたのか。筆者で元海自隊員の寶部氏が史実をひも解きつつ、その勝敗の本質に迫る。

 真珠湾攻撃から始まりミッドウェイ攻略作戦の中止までを時系列で取り上げる。日米双方の海軍の動きや「合戦観」、作戦思想、兵力量などが綴られ、どのように戦いが展開したのかが分かりやすく描かれる。

 随所に浮き彫りになるのは日本軍の見立ての甘さだ。例えば米軍の飛行機部隊の技量を「低劣」と見なしていた。筆者はこうした軽々の評価が、「兵士たちの心の奥に『緩み』を放ってしまった」と指摘。この「緩み」の積み重ねが、米軍の先制を許してしまう結果となった。

 本書には戦死した著者の兄への思いと、二度と戦争を繰り返してはならないとの信念が込められる。先の大戦を「平和な明日への過去」にするために、歴史を知ることの重要性を改めて感じさせてくれる一冊だ。

 (東京図書出版刊、1430円)

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