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ブックレビュー

日本海軍の志願兵と地域社会 木村美幸著


 先の大戦で、多くの兵を徴兵で動員した旧陸軍。それに対して旧海軍はなぜアジア・太平洋戦争期には徴兵ではなく、「志願兵」を大量に動員することができたのか。

 日露戦争後から敗戦まで、募兵制度の変遷を探り、各地の事例から兵士確保の実態に迫った。

 「日本の近現代史を考える上で、軍隊と戦争は避けては通れない問題である」とする著者は、軍隊と社会の関係を問う「軍事社会史」の国内研究に関して2つの課題を指摘する。

 それは陸軍に関する研究に比べ、海軍や志願兵に注目した研究が少ないこと、そして中央の意図が具体的にどのように各地域へ徹底されていったのかが十分に研究されていないということ。

 本書はそれらの課題に対し、当時の海軍の志願兵制度の実態や海軍と地域社会との関係などをさまざまな史料と共に考察し、海軍がいかに兵士を確保していったのか、その実態を解き明かした注目の一冊となっている。

 (吉川弘文館、9900円)

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