創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

ブックレビュー

現代戦略論 大国間競争時代の安全保障 高橋 杉雄著


 著者はテレビなどの解説でお馴染みの防衛研究所防衛政策研究室長で、核抑止論や日本の防衛政策に関する専門家。

 昨年末の「安保戦略3文書」の改定とほぼ同時に発売されるや、重版が決まった注目作だ。

 「現状変更」を図る中国に対し、「現状維持」を大前提とする日本の防衛戦略を客観的かつ論理的な手法で徹底的に分析・検討し、日本に勝機がある「統合海洋縦深防衛戦略」を提言する。

 我が国の「セオリー・オブ・ビクトリー(勝利の方程式)」は、仮に抑止に失敗して戦争になっても、残存兵力で中国の艦船を撃破し、海上で戦況を膠着させ、米軍の来援を待って有利な形で戦争を終結することだと説く。

 一方で、海外メディア向けの日本の情報発信の在り方についても鋭く指摘し、「情報発信の成否は紛争の帰趨(きすう)を決するものであり、広報戦略の見直しは急務だ」と訴えている。

 行政実務にも長く携わってきた経験を生かし、一般向けに分かりやすい言葉で簡潔明瞭に語られる本書には、将来の日本の安全保障の最適解を導き出すヒントが数多く隠されている。

 (並木書房刊、1760円)

最新ニュースLATEST NEWS