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ブックレビュー

「軍艦マーチ」の誤解と真実 谷村 政次郎著


 昨年11月、日本で20年ぶりの開催となった国際観艦式で印海軍のフリゲート「シュバリク」が日本国旗を掲げ演奏した海自の行進曲「軍艦」。“軍国主義”の象徴とされるなど数々の風説誤解にさらされてきた曲だ。海自音楽隊長として同曲を世界各地で演奏した著者が、誕生にまつわる通説や報道の誤りなどの数々の誤解を再検証する。

 著者はまず、先進国首脳会議(サミット)で演奏された「軍艦」に対するメディア報道などを検証。続いて諸説ある「軍艦」の誕生の経緯を探る。

 さらに明治時代の日露戦争時や皇太子明仁親王(現・上皇)と正田美智子さんのご成婚パレードでも「軍艦」が演奏されるなど歴史的な場面を紹介。最後に「軍艦」の作曲者論争などの変遷や今後の曲の未来について見解を語る。

 誰もが知る曲でありながら、明治の初演から敗戦を経て生まれてきた誤解を著者が一つ一つ検証して真実を探るさまは圧巻。帝国海軍最大の文化遺産といわれる名曲「軍艦」の奥深さを実感できるだろう。

 (潮書房光人新社刊、1012円)

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