創刊70年を迎える『朝雲』は自衛隊の活動、安全保障問題全般を伝える
安保・防衛問題の専門紙です

ブックレビュー

台湾有事なら全滅するしかない 中国人民解放軍 兵頭 二十八著


 ロシアによるウクライナ侵略で起きていることを下敷きに、台湾有事の際に中国人民解放軍が被る困難を占う一冊。都市や原発などへの攻撃を含むロシアのなりふり構わない破壊が、中国により台湾に及んだ場合の対策を提案する。

 ウクライナと台湾は、権威主義国家に狙われているという点では似ているが、異なる点もある。最大の違いは台湾は海に囲まれているという点。中国が大量の戦力を送り込もうとしても揚陸作戦は困難で、ロシアが6月にドンバス地方を激しく攻撃した時のような弾薬の補給は見込めないという。

 ただし、中国は台湾の対岸に千数百基の短距離、中距離地対地ミサイルを配備している。これらをウクライナ戦争のように飛行場などインフラ施設、学校や病院、劇場、ショッピングモールなどに撃ち込まれた場合、台湾に打つ手はない。しかし、ウクライナの例をみると、都市部に着弾したミサイルは住民を殺傷するが、住民の戦意をくじくことはできないと指摘する。

 ミサイルやドローン、住民自衛用の武器などの紹介がメインだが、台湾有事を考える上で一つの視点を与えてくれる。

 (徳間書店刊、2640円)

最新ニュースLATEST NEWS