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ブックレビュー

【現代語で読む】林子平の海國兵談 家村 和幸編著


 「林子平」「海國兵談」――。

 学生時代にこの用語をセットで暗記した経験のある人は多いだろう。

 「日本橋から唐、オランダまで境なしの水路なり」。日本は海に囲まれた海洋国家であるが故に、当時としては初めて、外敵からの脅威を想定した兵法書を著した林子平。その動機は、ロシアによる南進にほかならない。

 外圧への危機感から、大砲と軍艦の配備を訴えた先見の明は、その約60年後のペリー来航時になってようやく「品川台場」として実を結ぶ。だが、その時に彼はもうこの世にいなかった。没後、彼の思想は攘夷の志士たちに引き継がれ、維新の原動力となっていく。

 引き続きロシアという脅威にさらされる現在、防衛力の強化が叫ばれ、年末には外交・防衛政策の基本方針「戦略3文書」が改定される。本書を読むと、「海國兵談」は兵法書としては古典だが、「兵站」「偵察・斥候」など、戦いにおける基本条件は決して古さを感じさせない。用語解説も豊富で誰でも気軽に読むことができる良書だ。

 (並木書房刊、2420円)

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