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ブックレビュー

一九四五年夏 最後の日ソ戦 中山 隆志著


 1945年8月15日、日本がポツダム宣言を受諾して武装解除を進める中、ソ連は日ソ中立条約を破って千島・樺太に侵攻。日本固有の領土である南千島と北海道に付属する歯舞群島、色丹島まで占領し、北海道北半分の占領も要求した――。

 著者は昭和9(1934)年生まれで、防衛大学校教授として長年にわたりソ連軍事史研究に取り組んできた元陸将補。

 日ソ双方の史料を徹底収集、丹念に突き合わせる手法で作戦の全貌と第一線の実態を浮かび上がらせ、最後の日ソ戦に至る経緯と孤軍奮闘した守備隊の知られざる戦いを活写。軍民の苦労と受難の実情を明らかにする。

 本書は戦後50年を迎えた1995年に単行本として出版され、2001年に文庫化されたものを復刊。防衛研究所戦史研究センターの庄司潤一郎主任研究官と花田智之主任研究官が巻末にそれぞれ「解説」を執筆した。

 著者は本書が「隣国として真の友好関係を築き上げる努力の出発点」となることを望んだが、北方領土問題は滞り、ロシアによるウクライナ侵略が続く今、約30年の時を経て本書の価値はますます高まっている。

 (中央公論新社刊、990円)

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